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第7話

手を繋がれたままにやって来たのは、大きな丸い台座があるだけの不思議な空間。 まるで鏡のように光を反射するクリスタルの台座には四方に、一つずつ椅子がある。 そのうちの三つの椅子にはすでに人が座っており。皆、一様に美しい顔立ちをしていた。 「我が愛しの花嫁」 絹糸のような美しい白髪を靡かせて目の前に来たその人は、突然跪くと手を取りその手の甲に柔らかな口づけが落とされる。 「なっ……!」 「何してるんですか!」と続くはずだった言葉はそのまま声にはならずに消えてしまう。 まるで女性にするように恥ずかしげもなく手の甲に口づけを落とすその人に羞恥で顔を朱に染めながら「は、離してください」と声にすれば、「恥じらうそなたも実に可憐だ」などと更に可笑しなことを言う。 「全員揃ったな。では、本題に入る」 ごほんと咳払いをしてその場を仕切るのは、漆黒の髪を後ろで結った恰幅の良い男だ。 「まずは、花嫁に挨拶を……私は北方、冬を司る玄武神(げんぶしん)が一人、紫翠(しすい)だ」 鋭い瞳から威光を放つその男、紫翠は立ち上がり、一歩、また一歩と距離を縮めてくる。 その鋭い眼光に射すくめられ動けずにいると、傍にいた白髪の男が守るように間に割って入った。 「紫翠、あまり見つめると花嫁が怖がるであろう。怖がらせて悪かった、我が花嫁」 「……だが、あまり怖がることはない」と耳元で囁かれあまりの距離の近さに思わず後ずさる。 バクバクと心臓が早鐘を打つ中、目の前の白髪の男性はくすりと微笑み……。 「なんとも愛らしい……。我は西方、秋を司りし白虎神(びゃっこしん)、名を虎珀(こはく)という」 虎珀と呼ばれた男は、その長く美しい白髪を揺らし光希の傍に近づくとその細い手を取り再び手の甲に口づけを落とすのだった。

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