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第9話
何とも言えぬ空気に包まれる中、ゴホンという咳払いで再び場を仕切るのは黒の装束に身を包んだ紫翠だった。
「私たち四神 の無礼を……どうか許して欲しい」
深々と頭を下げる紫翠に、虎珀と朱火も同様に頭を下げる。
ししん……。
そのワードに僅かな引っかかりを感じつつも、頭を上げようとしない三人に慌てて歩み寄る。
「あ、頭を上げてください……!僕はなんともないので……!!」
気にしてないと表すようににっこりと微笑めば、おずおずと顔を上げた朱火に「本当に……?」と小さな声で問われる。
本当に気にしていなかった。
それなのに、ここまで誠心誠意謝ろうとする三人に逆に申し訳なさを感じるぐらいだ。
「うん、本当に。気にしてないから二人も顔を上げてください」
その言葉にようやく、虎珀と紫翠も顔を上げてくれた。
一人離れた場所に座る青髪の男性から尚も伝わる苛立ちが視線で訴えてくる。けれど、自分は何もしていないのだ。
そもそもそれ以前に、ここに連れてこられた理由を自分はまだ知らない。
突然目が覚めたら見知らぬ部屋で寝ていて、自分でも未だにこれが夢じゃないのかと疑う程だ。
「あ、あの……これって何かのドッキリとかですか?」
現実を理解できない光希は、テレビか何かの撮影のドッキリでこんな知らない場所に連れてこられたのではないか、という思考回路に至って辺りにカメラなど仕掛けられていないかキョロキョロと見回す。
そもそもこんな異世界感満載の部屋の作り、どう考えてもドッキリで作られたとしか思えない。
「どっきり?とやらは知らぬが、そなたをここへ連れて来たのは我らだ」
隠しカメラが何処にあるのか周辺を隈無く探す光希に声を掛けた虎珀が真剣な面差しで答える。
「連れて、来た……?一体何で……。あ、誰かに頼まれたんですか?」
優希の仕業かな?こういうイタズラ大好きだし……。
そう思って声を掛けたのに、虎珀の顔にどこか悲しみを含んだ切ない瞳を向けられて……。
そのあまりの悲しみの色に息を呑んだ。
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