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応援団③

「団長なんて大役、昨日来たばっかの奴に任せたら絶対アカンやろ。しかも俺、運動会の次の日にはまた転校して、ここにはもうおらんのやで? もっとこの学校に馴染みのある奴がやった方がええって」  反論しながら教室中を見回した清虎だったが、意外にもクラスメイトは団長というものに執着していないようだった。それどころか清虎が団長になることを歓迎していて、既に決定したような空気が教室中に満ちている。 「清虎のこの学校での思い出をさ、運動会で締めくくろうよ。俺も応援団に入って支えるし。ね? 一緒にやろう」  少し離れた席から陸が、屈託のない笑顔を向ける。清虎は観念したように溜め息を吐きながら、最後の抵抗を試みた。 「でも俺、放課後とか残れへんよ。舞台あるし」 「へーき、へーき。俺たちも塾あるから、放課後は残らないよ。そのかわり昼休みに練習があるけど、それなら大丈夫でしょ?」  あっさりと陸に言い込められ、清虎は眉間に皺を寄せながらも「わかった」と頷いた。 「ほんまにみんな、俺でええんやな?」 「ありがとう! 清虎」  嬉しそうに手を叩く陸につられて、拍手が沸き起こった。遠藤も顔の前で可愛らしく手を叩きながら、清虎に向かって微笑む。 「私も清虎くんの団長姿楽しみ。一緒にがんばろうね」 「あぁ……よろしゅうに」  苦笑いを浮かべつつ清虎が答える。そんな様子を眺めていたら、背中をツンとつつかれた。 「陸、俺も応援団やるよ」 「ありがと、哲治。今年の運動会は盛り上がりそうだね」  再び清虎の方に顔を向けると、目が合ってドキリとする。一瞬だけ見せた清虎のくしゃっとした笑顔に、陸は小さく息を呑んだ。

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