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全部、自転車の揺れのせい②
「当日は弁当が要るのかぁ。それって、よくあるレジャーシート広げて家族と一緒に食べる感じなん?」
「ううん。小学校の時はそうだったけど、中学は適当に生徒同士集まって、教室で食べるよ」
「そっか、そんなら良かった。当日は次の場所に移動する日やから、朝からバタバタでウチから誰も来れんしな」
ホッとしたような声を背後で聞き、陸はふと浮かんだ疑問を口にする。
「じゃあ、弁当どうするの?」
「朝、コンビニで買えばええんちゃう?」
清虎があまりにも当然のように答えたので、陸は「そう」としか言えなかった。
例えば部活の練習時や遠征でなら、コンビニで済ますこともある。しかし、今まで学校行事にコンビニ弁当を持参した者がいただろうか。禁止されてはいないが、少々肩身が狭いのではないか。
「でもプリントに書いてあるし、お願いしたら作るって言ってくれるんじゃない?」
心配そうな陸の言葉に、清虎は困ったように低い声で笑った。
「言うかもしれへんけど、時間ないし、現実的に無理やねん。自分で作ろうにも、前日にはもう荷物まとめられてて米も道具も無いだろうしなぁ。そうなったら、母親に『ごめん』って言わせてまうだけやろ。せやから、初めからプリントも見せへんよ」
その口調に卑屈さは微塵も感じられなかった。
勝手に「肩身が狭いのではないか」と想像し、作ってもらえと無責任に提案した自分が恥ずかしくなる。
清虎が何も考えず、「コンビニで買えばいい」などと言うはずがなかった。冷静に状況を把握し、親に余計な心配と負担をかけさせないために導き出した答えなのだ。それなのに自分はどうだろう。与えて貰うことに慣れ過ぎていて、自分で作るという発想すらなかった。清虎からすれば、随分と甘ったれで幼稚に見えたに違いない。
「俺、余計なこと言った……ごめん」
「りくー? また何か思い詰めとるやろ。謝らんといて、全然余計なコトちゃうから。ありがとうな。陸が気にしてくれたってだけで、俺は結構救われとるんよ」
陸の肩に顎を乗せた清虎の声が、少しだけ震えたような気がした。自転車の揺れのせいかもしれない。そうじゃないかもしれない。
陸は振り返ることができずに、無言でただ頷いた。
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