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最適解④

 陸の怯えた目の意味を理解した清虎は、青ざめながら首を振る。 「違う。俺は捨ててなんかいない」 「じゃあ……お願い、証拠を見せて。捨ててないなら、今もハチマキ持ってるでしょう?」 「もちろん」    陸に言われて清虎はポケットを探ったが、ハッと思い出したように顔を上げた。 「さっき色紙と一緒にカバンにしまってもうた」 「そんな嘘、もういいよ」 「嘘じゃない、今すぐ取って来る!」  走り出そうとした清虎の腕を、陸が掴んで止める。 「そんなこと言って、そのまま帰る気なんじゃないの。ハチマキ交換するのが嫌だったなら、ちゃんと言ってくれれば良かったのに。本当は、遠藤さんと交換したかったんでしょ」 「そんな卑怯なことするわけないだろ。俺を信じろよ」  陸と清虎のやり取りを目の当たりにしたクラスメイトが、顔を引きつらせながら後ずさった。 「え、なに。清虎が陸と交換したハチマキ捨てちゃったってこと? しかも関西弁じゃないし。もしかしてずっとキャラ作ってた? 今までの、全部ウソ?」 「ちがっ……違う! これには訳があって」  焦りからか清虎の声が上ずる。どれだけ否定しても、不信感は拭えない。 しばらく沈黙が続き、清虎は酷く傷ついたような顔で陸を見つめた。その表情のまま、低い声で笑い出す。 「情けない。『友達』なんて言っても、所詮こんなもんか。やっぱり俺は、信用して貰えないよそ者じゃん。それなら最初から、ほっといてくれたら良かったのに。だから嫌だったんだよ、誰かと仲良くなるの。結局最後は独りぼっちだ」  掴まれていた腕を強引に払うと、清虎は校舎に向かって走りだした。陸は遠ざかる背中を、呆然と見送る。  清虎の言葉はまるで弾丸だった。何発も心臓に打ち込まれ、痛みのおかげで徐々に冷静になってくる。   ――本当にこのまま、後を追わなくていいのだろうか。

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