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最適解⑥

 開け放たれたドアから、少しだけ顔を出して教室の中を覗き見た。  清虎が、陸の机の中を漁っている。  予想外の出来事にギョッとしてしまい、陸は掛ける言葉を失った。それと同時に清虎が何をしているのか気になり、陸は息をひそめてその挙動を見守ることにした。  清虎は何かを探しているようで、ようやく目当ての物を見つけて立ち上がる。手にしていたのは、陸には見覚えのない封筒だった。清虎はせっかく見つけたその封筒を、手の中でぐしゃりと握り潰す。肩が小刻みに震えているので、泣いているのかもしれない。  早く謝らなくては。  陸は声を出そうと息を吸う。その瞬間、清虎は腰をかがめ、陸の机を愛おしそうに撫でた。そのまま机に顔を近づけ、そっと優しく口づける。  西日に照らされた教室で、浮かび上がる清虎のシルエットは鮮烈だった。  陸は混乱しながら立ち尽くす。今見た光景を、どう受け止めれば良いのかわからない。清虎がゆっくり体を起こし、こちらを振り向こうとしていても、足は縫い留められたように動かなかった。  体の向きを変えた清虎と目が合い、もっと早くこの場から去らなければいけなかったと後悔したが、もう遅い。 「なんで……陸がここに」  一部始終を見られていたと知った清虎が、狼狽えながら一歩後ろに退いた。 「ご、ごめん。あの、謝りたくて、ハチマキのこと。疑ってごめんなさい。捨てられていたのは、偽物だった」 「はは。それで追いかけてきたんだ。足音も立てずに、覗き見までして。悪趣味だね、どこまで俺のこと馬鹿にしてんの」 「馬鹿になんてしてない! 本当にごめん」  清虎に近づくために、陸が教室に足を踏み入れる。清虎は片手を挙げてそれを制した。 「もういいよ、陸」  一瞬、許されたのかと思った。けれど清虎の表情は、どこまでも冷たい。

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