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大人になった今でも⑥

「ほら、覚えてない? 運動会の日、私と清虎くんが抱き合ってたの。あれもね、最後にハグさせてってお願いしてもダメだったのに、『陸くんを諦めるから』って清虎くんに交換条件出したらオッケーしてくれたんだよ」 「……清虎と付き合ってたんじゃなかったの?」  驚きながら聞き返す陸に、遠藤は笑いながら顔の前で手を振った。 「ないない。そんな噂流れてたけど、実は付き合ってなかったんだよね。あっ、その噂、私が自分で流したんじゃないからね。まぁ、あえて否定しなかったのは認めるけど」  ペロッと舌を出し、遠藤は首をすくめた。  陸は記憶の糸をたどる。確かに「なぜ遠藤と抱き合っていたのか」と問い詰めた時、清虎の歯切れが悪かったような気がする。それは苦し紛れの言い訳なのだと思ったが、違ったということか。 「俺を諦める交換条件……って、どういうこと?」 「えーとね、哲治にアドバイス貰ったんだ。最後に清虎くんとの思い出が欲しいって相談したら、『もう陸に告白したり、ちょっかい出さないからって言ってみろ、それで清虎は大抵の願いは聞いてくれるだろ』って。でもまさか、あんな場面を哲治と陸くんに目撃されちゃうとは思わなかったけどね」  遠藤は恥ずかしそうに、自分の頬を手で押さえる。  嫌な汗が流れた。あの日、何一つ見抜けなかった幼い自分に腹が立つ。 「哲治は、遠藤さんと清虎があの時、あの場所にいるってこと、知ってたんだ」 「知ってたよ。ついでに言ちゃうと、あの噂は哲治が流したんじゃないかって思ってる。私と清虎くんをくっ付けたがってたから」  信じられないと思う反面、やはりという気持ちも湧いた。今更それを知った所で、もうどうにも出来ないと言うのに。

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