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大人になった今でも⑦
陸は額に手を当てながら、参ったように息を吐いた。
「清虎は……今日、来ないのかな」
「私は幹事じゃないからわかんない。でも、そう言えば前に、興味本位で検索したことがあったんだけどね、『旅役者 清虎』のキーワードで。結局、何もヒットしなかった。本名で舞台に立ってないのかも。劇団名、覚えておけばよかったな。幹事の人も、清虎くんに連絡取れてないんじゃないかなぁ」
「そっか」
やはり行方を追えていないのかと、沈んだ気持になる。そもそも一ヵ月しかいなかった彼に、初めから声を掛ける予定はなかったのかもしれない。
合わせる顔が無いと思っていたのに、実際に会えないと解るとガッカリしている自分が滑稽だった。
「それよりも、さ」
遠藤が声のトーンを落とし、言い難そうに口篭もる。言葉を選んでいるのか、少し考えるように視線を足元に落とした。
「哲治は大丈夫なの? その……陸くんに対する執着、年々酷くなってる気がするんだけど」
そんなことを言われると思っていなかった陸は、「えっ」と聞き返したまま顔を引きつらせた。
「哲治って面倒見の良い人だから、最初は何とも思ってなかったんだけどね。陸くんに対して、過保護だなって思うくらいで。でも何て言うか、やっぱりちょっと危うい感じがして」
「危ういって……そんなこと」
「ごめんね、こんなこと言って。哲治に限ってそんな訳ないって思うんだけど。でもね、今日も本当は陸くんを同窓会に参加させるの嫌だったみたいだし。私、そのうち陸くんが哲治に閉じ込められちゃうんじゃないかって心配で」
冗談めかして大袈裟に言っているのではなく、本気で危惧していることが遠藤の口ぶりから解った。「閉じ込められる」と言う表現にドキリとしたが、そこまで哲治との関係は深刻ではないと、陸は肩をすくめる。
「考え過ぎだよ。確かに干渉されることは多いけど、それほど気にならないよ」
強がりなどではなく本心だったが、遠藤は眉間の皺を深めた。
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