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大人になった今でも⑧

「陸くんがそう言うならいいんだけど……。でも、さっき哲治が陸くんも二次会は参加しないって、本人に確認もしないで返事したでしょ? 少しだけゾッとした。当然のように陸くんの予定を決める哲治にも、それを黙って受け入れる陸くんにも」  遠藤はそう言って口を引き結んだ。麻痺していた部分を晒されたようで、陸は居たたまれなさに身を縮める。  今まで誰に指摘されることもなく過ごしてきたが、今の状態を当たり前だと思うのは、遠藤の言うように危ういのかもしれない。本当は、言われる前から解ってはいたのだけれど。  陸は何でもないことを強調するように笑ってみせた。 「あはは。あの会話、聞かれてたんだ。でも、これは……罪滅ぼしみたいなものだから」  仕方ないんだよ。そんなニュアンスを含んだ陸の言い分を、遠藤は納得できないと一蹴する。 「罪滅ぼしだなんて、陸くんは哲治にどんな罪を犯したって言うの? なんか、おかしいよ」 「うん。傍から見たら、おかしいかもしれないね。そもそも俺の自己満足だし」  自分の腕をさすりながら目を逸らす陸に、遠藤はもどかしそうに顔を歪めた。 「陸くんと哲治のやり取り、一場面だけ切り取れば、ただ哲治が心配性で世話を焼いてるって感じで、誰もその『おかしい』ってことに気付いてないけど。でも、注意して見てると違和感がある。哲治が陸くんを支配してるみたい」  陸はもう、反論することを諦めてうつむいた。遠藤は畳みかけるように言葉を続ける。 「ずっと忘れてたんだけど、今日の同窓会で一つ思い出したことがあって。清虎くんがね、私を抱きしめてくれた時に言ったんだ。『陸が哲治に囚われないように見ていてあげて』って。中学生の時は何のことかわからなかったけど、今日、意識して哲治と陸くんを見ていたら、ああ、そういう事かって腑に落ちた。もっと早く気付いてあげればよかった。ごめんね」 「清虎が……?」  遠藤が静かにうなずく。  押し殺したうめき声のような吐息が陸の口から漏れた。

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