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本当の名前を呼べば、目の前から消えてしまいそうな気がして陸は口を結んだ。
零は、清虎だ。
確信をもって陸は手を伸ばす。
その手は強く握り返され、手の甲に柔らかいものが触れた。熱い息がかかり、それが清虎の唇だと気づく。手のひらに吸い付くように唇を押し当て、指を口に含んで舌を絡める。
「ここも同じようにキスして欲しい?」
下着越しに陸の陰茎を爪の先でツーっと撫でた。ぞわっとした鈍い快感が背中の方まで駆け抜け、既に充血していた部分が更に反応してしまう。
「あッ……! 駄目だよ。そんなところにキスなんて」
「でも、期待してるみたい」
下着をずらし、清虎は尖らせた舌先でカリを刺激した。陸の先端から先走りの雫がこぼれ、根元まで濡らしていく。清虎は親指の腹で鈴口を捏ねながら、陸の後ろの蕾に指を添えた。驚いた陸の体が反り返る。
「あッ、ああッ。ま、待って、何するの」
「気持ちいいコト」
竿を上下に扱きながらチロチロ舐められ、陸の呼吸は荒くなっていった。唾液で濡らされた蕾に、清虎の指が乱暴に侵入してくる。
「痛っ、痛い! イヤだ」
「痛い?」
本気で嫌がる陸に、清虎は驚いたような声を出す。
「まさか、本当に誰にも触られたことが無いの?」
歯を食いしばって陸が頷く。清虎は陸の中に入れていた指の動きを止めた。
「誰にも……。そっか。そうなんだ」
清虎は噛みしめるように呟いた。心なしか笑っているような気さえする。
陸はこれで解放されると安堵したが、清虎が体の上から退く気配がまるでない。身をよじって移動しようとした陸の腰を、清虎が抱えるように捕まえた。
「じゃあ、優しくしてあげるね」
「え?……あッ」
言葉の意味を理解する前に、下半身に強い刺激が加わった。清虎は陸の膨らみ切ったモノにねっとりしゃぶりつきながら、後孔を解していく。腹の内側をゆっくり擦られ、異物感にたまらず陸の腰が浮いた。
初めは苦痛で仕方なかった指の動きが少しずつもどかしく感じられ、全身に鳥肌がたつ。
「うぁッ、あああ!」
指が掠めただけで、声を我慢できない場所がある。探り当てたその場所を、清虎の指が執拗に攻めた。陸の喘ぎ声は悲鳴へ変り、興奮と快感が押し寄せ、勝手に体がひくついた。
「口、離してッ……! もう動かさないで、出ちゃうからっ。アッ、ああ」
「いいよ、このまま出して。全部飲み込んであげる」
目隠しされた陸の耳には、卑猥な水音と清虎の荒い息遣いが届いた。清虎も自分で慰めているようで、声が上ずっている。
「あッ、出る……!」
吸い付きながら陰茎を口内の粘膜に擦りつけられ、耐えきれずに陸は吐精した。ゴクリと清虎の喉が鳴る。敏感になっている陸の竿にキスを繰り返しながら、清虎の体が小刻みに揺れた。
「あっ……んん」
清虎も達したらしく、押し殺したように短く喘いだ。きっと無意識なのだろう。吐息混じりの声で「りく」と呼ばれ、愛しくて狂いそうになる。
静かな部屋に響くのは、二人の息遣いだけだった。
まるで夜の海に投げ出され、漂流しているような浮遊感に包まれる。このベッドは二人だけの舟だ。ゆらゆら頼りなく波間を漂う。
嵐が来たとしても、どうか沈まないでくれと願った。
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