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まるで、だまし絵⑤

 辿り着いた先は、予想通り大衆劇場だった。役者たちの顔写真が載っている看板を見上げ「やっぱり」と哲治が呟く。 「なるほど、美少年がそのまま成長するとこうなるのか。何か綺麗過ぎて怖いな。で、昨日は清虎に会って何か話したの?」 「送り出しの時に少し。深澤さんと佐々木さんのどっちが恋人かって聞かれたから、どっちも違うって答えただけだよ」 「それで、清虎は何て?」 「『別にどうでもええけど』だって」  不貞腐れたような陸の言葉に、哲治がくくっと喉を鳴らした。 「どうでもいいって思ってる奴が、わざわざそんなこと聞かないだろうに。相変わらずだな」 「何それ」  陸の問いには答えず、哲治はチケット売り場の方へ移動する。すぐ店に戻ると言っていたのに舞台を観るつもりなのかと疑問に思っていたら、係員らしき年配の男性に「こんばんは」と声をかけた。 「突然すみません。俺たち、清虎くんと中学の時、同じクラスだった者です。一度だけここに来たこともあるんですが……」  それを聞いて陸はハッとした。この老人は、むかし食事に誘いに来た時に、清虎が「じぃちゃん」と呼んでいた人だ。  老人の方も哲治と陸の顔を見比べて、ああと思い出したように手を叩いた。 「まさか、哲治君と陸君」 「そうです。名前まで憶えていてくださったんですか」  驚きながら哲治が手を差し出し、老人と握手を交わす。老人は嬉しそうに目を細めながら、何度も頷いた。 「覚えているとも。後にも先にも、遊びに誘いに来てくれたのは君達だけだったからね。今回もまた会いに来てくれたのかい。本当にありがとう」  哲治の手を握りながら、ありがとうと何度も繰り返す。その老人の反応だけで、いかに清虎の置かれている環境が特殊なのか理解できた。 「今日も食事に誘いに来たんです。何時になっても構わないので、うちの店に来てくれと伝えて頂けませんか」 「ありがとう。必ず伝えるよ」  涙ぐむ老人に別れを告げて、哲治と二人で歩き出す。 「陸もこのまま店で清虎を待てばいいよ。一緒に戻ろう」 「うん」  言葉少なに答えると、哲治が重たい息を吐いた。 「何だかタイムスリップしたみたいだ。俺たち、中身はあの頃と大して変わってないな。何やってんだか」  自嘲めいた呟きに、陸は「本当だね」と返す。久しぶりにちゃんと会話が成立している気がしたが、哲治の底の知れない黒い目に胸が騒いだ。

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