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迷路の途中で⑦

 清虎は、言いかけた言葉を一度飲み込んだ。 「いや、そもそもココでする話ちゃうな。ええと、どないしよ。あー、そや。同窓会ん時、俺とぶつかったバーラウンジあったやろ、そこで待っとって。着替えたらすぐ行くから」  周りにもう客の姿はなかったが、他の団員が興味深そうにこちらを見ているのが気になったらしい。焦ったように清虎が早口で一気に捲し立てる。 「わかった。待ってる」  うなずいた陸はその場を離れ、遠藤の元へ戻った。何だか体がふわふわ浮いているようで落ち着かない。 「ごめん、お待たせ」 「ううん、平気。しっかり話せた?」 「うん。この後ちょっと時間作って貰えた。あの……今日は誘ってくれてありがとう。ここに来れて、本当に良かった」  噛みしめるように話す陸に、遠藤は恐縮したように「やだなぁ」と手をパタパタ振った。 「こちらこそ、ありがとうだよ。チケット代出して貰っちゃたし。この後、清虎くんと会う約束出来て良かったね。たくさん話してきてね」  そう言った後、遠藤は微笑んでいた口元をきゅっと引き締め、真剣な眼差しを陸に向ける。 「私は今から炭膳に行って、哲治の様子を見てくるよ。きっと今頃、反省してるだろうし、落ち込んでると思うから」 「そっか……。俺がこんな風に言うのはおかしいかも知れないけど、ありがとう。実は少し心配だった」 「うん。ま、行っても哲治に余計なお世話だって追い返されそうだけどね」  肩をすくめる遠藤に、「そんなことないよ」と陸は首を振る。哲治がどう思うかは解らないが、誰かが気にかけてくれるだけで、少し救われるかもしれない。「また連絡するね」と歩き出した遠藤が、雑踏に紛れて見えなくなるまで陸はその背中を見送った。 「さて、俺も行くか」  同窓会のあったホテルは、ここから五分とかからない。  歩いているうちに少しずつ冷静になり、先ほどの自分の行動を振り返って赤面した。あんな場所で「好きだ」などと気軽に告げてしまい、恥ずかしくて隠れたくなる。  清虎は呆れているに違いない。

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