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嫉妬くらいさせてよ⑦

「嫉妬……?」  誰が、誰に。  陸はポカンとしたまま深澤の顔を見上げた。深澤は眉を下げて、ははっと笑う。 「まぁ、急に言ってもピンと来ないか。今のは気にしないで。それより、あの店の企画を佐伯くんに任せたいんだけど、どうかな」 「えっ、今の店ですか。俺に?」 「そう。佐伯くんだったら、どんなメニュー考える?」  嫉妬の意味を深く考えようとした矢先、急に企画を任せると聞いて、陸は思考を切り替えた。 「そうですね。ランチタイムではそれほどデザートが出ている感じではなかったので、夜の居酒屋形態の方に照準を絞りたいです。デートで利用する人も多そうだから、見た目は大人っぽく、高級感を意識して。フルーツソースを使用したカクテルの提案も良いかも」  深澤は陸の提案を聞きながら、「良いね」と満足そうにうなずく。 「やっぱり佐伯くんは向いてるよ、この仕事。その方向で進めてくれるかな。今後もガンガン任せるからね。期待してるよ」 「はい、頑張ります。……でも、何で急に?」 「急にってこともないでしょ。前から佐伯くんには頼ってたし。入社して二年目なんだから、そろそろ責任のある仕事も増えていくのは自然だと思うよ」  それもそうかと納得しながら、車を停めたパーキングにたどり着く。陸は頭の中でデザートのプランを練りながら、助手席に座った。  運転席のドアに手を掛けた深澤は、窓越しに車内の陸を見つめる。 「今は仕事へのやり甲斐でもいいから、とにかく引き留めておかないとね。キミが零を追って、ここから離れて行かないように」  小さな独り言は、もちろん陸の耳には届かない。  深澤は運転席に乗り込み、エンジンをかけた。車はゆっくり走り出す。 「今度、夜に来よう。どんな酒や料理なのか、実際に味見したいだろ」 「そうですね。提供されている料理とのバランスも考えたいですし」 「じゃあ空いてる日、教えてね。そうそう、気になってる店、他にもあるんだけどさぁ、また昼飯で付き合ってもらってもいい?」 「それは構いませんけど、ちゃんと俺にも払わせてくださいよ」  陸が念を押すように言うと、深澤は「律義だねぇ」と肩をすくめた。

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