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この心臓は誰のもの⑦

 少し遠回りをしてもらい、マンションの前でタクシーを降りる。部屋にたどり着くと緊張が解け、ドッと疲れが押し寄せた。 「ホンマ驚かせてごめんな。それと、あの子の前で本名呼ばんでくれてありがとう」  買ってきた物を冷蔵庫に移しながら、清虎がすまなそうな声を出す。陸も自分の持ってきたバッグからスーツを取り出し、壁掛けのハンガーフックに吊るした。 「ああいう熱烈なファンって多いの? あ、これはヤキモチじゃなくて、単純に清虎を心配してるだけだからね」 「別に妬いてくれてもええんやで。そやなぁ。出待ちするコもたまにおるけど、あない遅い時間まで待たれたんは初めてやった。素顔やし眼鏡もしとるし、気付かれんやろって油断してもーた」 「また来ちゃうかな、あの女の子」 「どうやろね。今度から外出る時は、もうちょい気ぃつけるわ」  パタンと冷蔵庫の扉を閉め、清虎が陸に向き直る。堪え切れないように陸の頬をスリスリ撫で、とろけるような笑みを浮かべた。 「陸が俺の部屋におるって、超不思議。そんで、めっちゃテンション上がる」 「あはは。俺も今日は昼間から浮かれてた。夜になるのが遅くて参ったよ」 「陸も? 俺も早う時間経てって思っとった。会いとうて、気ぃ狂うかと思ったわ」  愛しそうに目を細めた清虎の顔が近づく。ふわりと優しく唇が重なり、すぐに離れた。「もっと」とねだるように、陸は思わず清虎の唇を追ってしまう。軽く触れるだけのキスを繰り返したが、自制を働かせ呼吸が荒くなる前に何とか体を離した。二人は名残惜しそうに見つめ合う。 「アカン。これ以上したらサカってまう。俺、風呂入って来るわ。陸は眠かったら先に寝とってええからね」  脱衣所に消えていった清虎を見送って、陸はベッドに腰掛けた。そのままころんと横になると、布団からほのかに清虎の匂いが香る。何だか抱き締められているような気分になって、自然と顔がほころんだ。  そのうち、瞼が重くなる。 「あ、ごめん。起こしてもうた」  次に目を開けた時、真正面に清虎の顔があって驚いた。いつの間にか寝てしまったようで、風呂から出た清虎は陸の寝顔を堪能していたらしい。 「陸の寝顔、めっちゃキレイやなぁ。お人形さんみたいやったで」 「綺麗なのは清虎でしょ」

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