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第4話

 彼を寝台に運び寝かせる。今はうなされていた。運んだ時に少し熱かったので、熱が出ているのだろう。他、外傷は擦り傷や切り傷。あとは挫いたのか、足首が腫れていた。  どこからどこまでが鶏の仕業かは分からない。それでも罪悪感を覚えないわけじゃない。アンリは、彼にできる限りの応急処置を施すことにした。  乾燥させて保存していた蛇の皮を、水で戻して傷口に貼る。捻挫には草の根を潰した時に出る汁を貼る。薬草は、彼が起きた時に煎じて飲ませればいい。すべて、この森に来てから、アンリが四苦八苦して得た知識だった。  おおよそ一時間に一度、水に浸した額の布を新しいものに代える。その隙間時間で、家事や畑仕事を片付けていく。何も甲斐甲斐しく世話を焼くことに喜びを覚えたいわけでも、見返りを求めているわけでも、ましてや純粋な優しさでもなかった。  アンリの目の前で寝ている男は、どう見てもアルファだった。オメガである自分と、長く一緒にいては面倒事は避けられないだろう。時には旅先で火遊びをする修学生もいると聞くが、純情なアルファのひと時の恋の相手をするのも、遊び慣れたアルガの性処理の道具として弄ばれるのも御免だ。  発情期が来て、本能で逆らえなくなってしまう前に――何としても、彼には帰ってほしかった。

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