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第18話

「ふざけないで」  アンリは間髪入れず一蹴した。何を言っているんだ。何を考えているんだ。こっちはオメガなんだぞ。レオンがからかっているだけにしろ本気だったにしろ、番になっていないアルファとオメガが共に寝るなど、オメガにとっては危険極まりない行為だった。  アルファの貴族様が、オメガに対してどのような考えを持っているかは分からない。ちょっとした火遊びや戯れの提案にしては、オメガ側のリスクが高すぎる。  万が一取り返しのつかない事態が起こり番になった時、責任を取ってもらえるのならまだ良い。しかし実際は、逃げられることの方が多いだろう。そしてひとり取り残されたオメガのその後は悲惨だと聞く。拒絶反応で他のアルファと結ばれることなく生きていかなければならない。アンリは誰とも結ばれるつもりは無いが、それでも……。 「万が一、周期からずれた発情期が来たら? それでお互いに歯止めが効かなくなって、気づけば番になっていた、なんてこともある。そして、そんな時に損をするのはオメガの方だ」 「俺は、君の許可なく番になろうとは思わない」  はっきりとした声だった。 「触るなと言うなら、指一本すら触れない覚悟はできている。だが、番になった暁には、君を一生幸せにすると誓おう」 「飛躍しすぎ……誰があんたと結ばれる話をしたんだ……」 「君に酷いことは決してしない。君が嫌だということもしない。ただ君を床で寝かせたくないだけなんだ」  それから、レオンはアンリの手を取った。最初にやられたものと同じ、忠誠を誓うポーズ。  じゃああんたは床で寝て、と意見を曲げるわけにもいかない。アンリは自分の中でいくつか考えを巡らせた。自分は大人しいオメガじゃない。変なことをしてきたのなら挫いている方の足を蹴ればいい。即座に追い出してやればいい。 「……わかった。二人でここで寝よう」

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