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第19話

 許可が無いなら指一本触れないと言ったのに! そう思ったが、アンリはそもそもまだ自分が「触るな」と言ってないことに気づいた。というより、言う間もなく寝台に、即座に引きずり込まれていた。  早計だったと思ってももう遅い。今、アンリはすっぽりとレオンの腕の中にいる。 「ありがとう」  アンリの渋々の頷きに、レオンは大袈裟なほどの笑顔でお礼を言った。それから、そっと背中に手を回される。変なところを触られる気配はないから、別に良い。  問題は、アンリが自分の腕をどうすれば良いのか分からないことだった。腕の中で固まったまま、ぴしっとまっすぐ身体の側面にくっつけて寝るわけにもいかない。  彼の背中に、手を回してもいいんだろうか。  そっとレオンの背中に手を這わせる。二人の間に距離などもう存在していない。ぴったりとくっついていると、心臓の音は聞こえていないか、手の震えは伝わっていないか、不安になった。  緊張しすぎたのか、つい彼のシャツの背中部分をぎゅっと握りしめてしまう。その時だった。レオンが息を呑む音が聞こえた。 「わっ」  ぐっと引き寄せられ、アンリはレオンの胸に顔を埋める形になった。抱きしめたくてたまらないというような、衝動とでも言うべきものを感じる。息ができない――違う。吸う度にくらくらするのだ。久々の人の温もりと、自分は今、アルファに抱きしめられているのだという本能が、鼓動に直結している。  このまま一晩過ごせば、自分がどうなってしまうか、アンリには分からなかった。

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