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第22話

 結局、アンリが寝たのは明け方になってからだった。  起きて最初に頭に浮かんだ言葉は、「寝過ごした」だ。いつも見て、魘されて目覚めるはずの過去の夢を微塵も見なかったからだろうか。ぐっすりと寝たという満足感が全身に広がっていく。森に来て以来、初めてのことだった。  アンリひとりであれば、いくら寝過ごしても構わない。しかし今日寝過ごしてしまえば、レオンの朝食がない。アンリひとりであれば、食べたり食べなかったり好きに過ごせばいいのだが、成長期のレオンはそうもいかないだろう。  ふわふわとした身体の浮遊感があり、かなり眠っていたのだと思ったが、まだ日が昇ってからはそれほど経っていないようだった。いつもより一時間ほど遅い起床時刻だ。  レオンはまだ隣で寝ていた。朝に弱い体質なのかもしれない。  困ったのは、アンリをがっちりと抱き込んで離さないことだ。寝る前も抱きつかれていたような気はする。優しく、嫌なことはしないと言った通り、逃げようと思えば逃げられる程度の力で抱いていた。それなのに、今は彼の腕の中で身じろぎもできない。 「ねぇ、起きて」  アンリが何度声をかけても、芳しい反応は無し。たまにむにゃむにゃと寝言にならない寝言を呟くために口を動かす。いくら図体がでかくても、こうして眠っているとあどけない子供のようだった。  揺さぶっていると彼が寝がえりを打ったので、なんとか腕の中から抜け出すことができた。すると、しかめ面でシーツにある温もりの名残を手繰り寄せようとする仕草に、思わず笑いそうになった。可愛いという言葉が浮かんだが、すぐに頭の隅に追いやる。

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