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第24話

 木箱を開けると、目的のものはすぐに見つかった。  高級な皮でできた太めのチョーカーだ。中央には無色の鉱石がはめられていた。その石は硬く、陽の光に透かすと色が変わって見える珍しいものだった。  崩れることなくいつまでも輝くその意志を、財力ある貴族は永遠の愛の象徴として、チョーカーに……オメガがつける首輪にと選んだ。アルファと結ばれる際に、オメガはその首輪を外し、首を噛まれる。そして番ができてつける必要のなくなったチョーカーを、オメガはアルファに渡すのが貴族の間での慣習だった。それは、自らの永遠を、貴方に捧げるという意味合いを持つ。  貴族の家では、オメガが生まれたと分かれば、必ずそのチョーカーが贈られた。アンリもその例に漏れなかった。自分にはもう首輪など必要ないと思って、森に来た初日に外し、木箱の底にしまいこんだ。  もうすぐヒートが近い。アルファであるレオンの近くで発情期に入ってしまえば、アンリには理性を保てる自身がなかった。噛んでほしいと自ら縋りつく姿が、簡単に想像できたのだ。貴族の彼に噛まれることだけは、どうしても避けたかった。  アンリの手の中で、チョーカーの金具部分がぶつかり、かちゃりと音を立てた。窓の無い部屋で、陽に透かさずに見る鉱石は、ただのくすんだ石に見えた。  しばらくは、これを付けて生活すべきなのだろう。ただ、家族から送られ、貴族だった時の記憶とともに持ち出してきたそれを、アンリはどうしても付けようとは思えなかった。

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