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第35話
「もっと……一緒に、しよう……」
囁くように言うと、彼はぐっと言葉を詰まらせた。
「駄目だ、これ以上は……」
「どうして……?」
答える彼は、前かがみだった。
「っ、俺は、外で抜いてくる……」
「そんな必要、ないよ……」
起き上がり、前のめりになって彼を押し倒す。油断していたのか、彼はそのまま後ろに尻餅をついた。
「ん……全部、俺がするから……」
彼のズボンを下げ、張りつめていたものを出す。その辺りで何をされるのかを察したのか、頭上から「嘘だ」とか「止めろ」だとかいう声が降ってくる。けれど、アンリはその言葉が聞こえない振りをした。なぜなら、欲しくてたまらないからだ。もう目の前の欲望しか見えていない。
「んぅ、ふ……っ」
男性器の先端を口に含むと、びくりと震えた。自分の口で反応してくれているのだと思うと、もっとイジめたいような、可愛がりたいような気持がむくむくと膨らんでいく。本当は奥まで咥えたかったが、慣れない上に性器も想像以上に大きく、できそうにない。しかたなく、竿の部分をちろちろと舐めていく。
既に先走りが垂れていたのか、口いっぱいに青臭い味が広がる。とても美味しいとは言えない味だが、それこそ本能が求めていたものだ。
「ふ、ぅ……んんっ……」
これもひとつの粘膜同士の接触だろう。上顎を性器の先端でこすられると、気持ちが良い。自然と腰が揺れていた。
先ほど一度達していたはずのアンリの性器も、再び勃っていた。たまらなくなり手を伸ばす。しかし、性器そのものではなく、濡れそぼった後ろに、だった。
指を挿れると、上も下も犯されているような感覚になる。夢中になって貪っていると、声をかけられた。
「……っ、もう、出る……っ」
本当は、射精してしまうから離してくれという意味だったのかもしれないが、聞こえない振りをして、舌での愛撫を続けた。少しも経たない内に、自分も彼も達した。口腔にどろりとしたものが注がれ、それを飲み下す。
「だ、大丈夫か……?」
焦った彼の言葉に静かに首を振った。最初から、大丈夫なんかじゃなかった。
「飲み下すようなものじゃない、どこか気分が悪くなったりとか……」
その言葉も、再び首を横に振って否定する。気分は良かった。むしろ、良すぎて悪いくらいだ。快感は収まるところを知らず、このまま昂り続ければ、自分は壊れてしまうのではないかと怖くなる。
「まだ……もっと、したい……」
もう一度、彼に見えるように、見てもらいたくて脚を広げた。
自分からアルファを誘うなんてしたことがない。だからどんな風にすればいいのか分からず、ただ懇願するしかなかった。そうまでするほどに、本能が彼を欲しがった。
自分から彼に触れるばかりでは、もう足りない。
「お願い……触って……っ」
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