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第44話

 アンリが外に出ると、その日は霜が降りていた。二人で睦みあっている内に、冬の本番が到来したらしい。もうすぐ雪も降るようになるだろう。 「帰る予定ではあったんだが……」  レオンが言い淀んだので、その先を拾って言った。 「この雪じゃ帰れないよ」  嘘だ。本当は、道に慣れているものなら帰れるだろう。ただ迷ったら危険というだけで、アンリがレオンを送っていけば済む話だった。 「何かあったら寝覚めが悪いし……」  そんな言い訳とともに、次の言葉もするすると口をついて出る。 「冬が終わるまで、ここにいれば」 「……ありがとう」  嬉しそうに言われるのが決まり悪く、アンリはそっぽを向く。すると、隣からくしゃみが聞こえてきた。レオンは森の寒さに慣れていない。

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