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第45話

 アンリひとりだけならば、厚着をして毛布にくるまっていれば耐えられる寒さだった。しかし、その方法は選ばなかった。 「……寒いなら、来てもいいけど」  両腕を広げると、レオンはそっとアンリを抱きしめた。ヒートの時のように、激しく求めあっているわけではない。それでも、とても温かかった。 「冬が明けるまで、もっと君を知ることができる」  嬉しそうにレオンが笑う。  本当は、自分の過去を知られるのが怖い。怖いが……アンリの中に、レオンのことを知りたいと思う心があるのもまた、事実だった。  身体を重ねて情が生まれたのか、久々の他人の温もりに、心が震えているだけなのか。……それとも、レオンのことを、好きになってしまったのだろうか。  アンリには自分の気持ちが分からない。しかし、レオンのことを知れば、少しは分かるような気がした。

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