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第46話
人のことを知りたければ、自分のことも話すべき。もしそれが対等な関係だと言うのなら、アンリはレオンのことを探るつもりはなかった。
考えは態度に出てしまうものだろうか。
少し前から、二人の間に流れる空気は、ぎこちないものになっていた。頭を撫でられるような些細な触れ合いにも、身体をびくりと震わせてしまう。
レオンがアンリの目を見て話そうとすると、そっと顔を背ける。嫌いだから避けているわけではないが、レオンのことを好きなのかも分からない。
そもそも、アンリは恋愛感情を知らなかった。家族への親愛は抱いたことはあるが、家族であれば、近づいてきてもそわそわして、いたたまれなくなるようなことはないだろう。
最初はアンリの態度を気にしていたレオンも、数日が過ぎれば開き直ったようだった。
朝起きたら一番に「好きだ」と囁きかけてくる。料理中や畑仕事中、鶏の世話をしたり洗濯や部屋の掃除をしている時――ことあるごとに、「可愛い」と言い続ける。
「可愛い」は止めてと訴えたら、「愛しい」になり、やがては「愛している」へと変貌を遂げた。
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