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第49話
「くつろいでいるし、君がいる限り、鶏たちには怖いものなどないみたいだ。俺に襲いかかってくるくらいだ」
「そりゃあね。鶏小屋の中にいれば、蛇は入って来ないし、怖いものなしでしょ。俺は関係ない」
「その小屋を作ったのも君だろう。鶏たちは、君の優しさを享受し、よく知っている」
「そんなにお綺麗なものじゃないよ」
ただのギブアンドテイクだった。
鶏たちは卵を産み、アンリに食料を提供してくれる。だからアンリも彼らの世話をする。それ以外の何でもない。
「でも、君はよく鶏に話しかけているじゃないか」
「な……っ!」
見られていた――正確には、聞かれていたとは思わなかった。
鶏に話しかけるのは、もはやアンリの癖になっていた。
一羽一羽に名前をつけることはしていない。それでも、アンリは時おり、今日の天気や気温について、鶏たちに話しかけることがあった。
餌を食べている時に「そんなにがっつかなくてもいいのに」と思い、気づけば声に出ていたこともあった。
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