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第53話
次の日、今年になって初めて雪が降った。
その日は、リスが小屋の中に迷い込んできた。
冬眠できなかったリスが、温もりや食物を求めてやって来るのはよくあることだ。
アンリはリスを鳥籠に入れ、レオンはリスをスケッチする。雪の日の午後は穏やかに過ぎていく。
リスは二人のどちらにも懐く気配はない。
野生の動物は警戒心が強いから当然だ。室内は寒いだろうと思い、アンリが温めた湯を陶器の器に入れ、リスの鳥籠の周りに置いた。
リスは怯えてしまったのか、隅の方に行ってしまった。
鳥籠は、倉庫部屋にあったものだ。アンリは何故そんなものが置かれていたのかは知らないし、レオンも特に気にしていないようだった。
ただ、鳥籠があるということは、以前にも似たようなことがあったのかと訊かれた。
アンリは「うん」と答える。彼は、アンリが森を出て、どこかの村で貰ってきたものだと思ったのかもしれない。
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