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第54話

「たまに冬眠をしそこねたリスが、森に落ちていたり、小屋に入ってきたりすることはあるよ」  そんな時、アンリは拾って、鳥籠の中で冬を越させ、春には逃がしていた。  正確には、鳥籠を開けるだけだ。出ていきたいのなら出ていけばいいし、留まりたいのなら留まってもいい。  しかし、今までにこの中で冬を過ごしたリスは、全員出ていった。  鳥籠を開けると、最初は戸惑うようにきょろきょろと辺りを見回すが、しばらく経つと、森の奥へと消えていく。  その瞬間、アンリはいつも、ひとりになったとほっとするような、不安が増したような、複雑な気持ちになるのだった。 「どうして助けようと思ったんだ?」  珍しく、レオンの方から訊いてきた。今回は「優しいんだな」の一言で済ます気はないらしい。 「君が優しいのはもう知っている。自然の摂理と優しさを天秤にかけて……君はどうして後者を選んだのか、知りたかっただけだ」 「気まぐれだよ」 「そのわりには、鳥籠を用意するくらいだ。そうしようと決めたきっかけくらいはあるのだろう?」 「……救えたらいいと思った。たとえ、それが傲慢だとしても」 「やっぱり、君は優しいな」  レオンの言葉に、アンリは首を横に振る。

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