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第56話
部屋を暖めるものは、全てリスに与えてしまった。
ならば、互いの肌で温め合うしかない。発情期に入りぼうっとしたアンリの頭では、それがひどく理にかなった行為に思えた。
発情期の間、肌を重ねる度に、触り方に熱が籠もった。
「んっ……あ、きもちいい……っ」
アンリが特に夢中になったのはキスだった。唇を貪られ、舌を食まれる。呼吸が苦しくなると、全身から力が抜けていく。
キスの後は、吐息も言葉も、甘えるように口から漏れ出していた。
「触ると、口調が幼くなるんだな」
「言う、な……んんっ」
からかうように微笑まれて、もう一度唇が重なる。顔がかっと赤くなるのが分かった。
「どちらが本当の君なのか、気になっただけだ」
「そんなの、どっちでもいい……」
「ああ。どちらの君も好きだ。それでも、知りたいと思うだろう。好きな人のことなら、何でも」
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