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第75話
お茶会の参加者も、始めは少女という印象の者ばかりだったが、月日が経つにつれ、だんだんと女性の顔をした者が増えてきた。
話題は美味しい薔薇のジャムの話から、自らに訪れる恋愛へと移行していく。どちらも白い頬を紅潮させ、楽しそうに話す様子に変わりはない。
しかし、後者の方が彼女たちにかかわることだけあって、より未来への期待を膨らませながら言葉を交わしているように見えた。
恋だの愛だのの話になると、姉は決まって聞き役に徹していた。貴族に自由恋愛なんてありえない。
よほど子供の多い家であれば、お気楽な四男坊、五男坊あたりもいるだろうが、ルネット家の子どもといえば、ミレーヌとアンリしかいない。そして二人ともオメガとなれば、できるのはせいぜい、親が集めてきた候補者の中から、できるだけ条件の良いアルファを選ぶことだけだ。
「ミレーヌ様にも、とうとうご婚約のお話が来たのだとか!」
「まあ! 相手はきっと、素敵な紳士でしょうね」
噂好きの一人が話を切り出すと、周りは待ってましたとばかりに盛り上がる。
「そんな……そういう話もあると、私も父に聞かされたばかりなんです」
それは、ミレーヌにしては珍しく、お茶を濁したような回答だった。
それもそのはず。父が持ってきた婚約話が原因で、三日ほど前から、ミレーヌとアンリの間に流れる空気は、やや気まずいものになっていた。
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