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第76話

 基本的に、家柄のよいアルファは、オメガに個人的な興味を持つことはない。縁談はオメガの側から持ちかけられ、家によっては、アルファ側が候補者のひとりになることを了承する仕組みだった。  そのため、あの家のオメガなどんな性格で、どんな趣味で、何が好きで何が嫌いかなど知るはずもなく、彼らのもとにある情報は、「ルネット家にはオメガが二人いるらしい」くらいのものだ。  結果、婚約の話は、ざっくばらんに持ち掛けられた。言ってしまえば、「そちらの家にいる二人のオメガのうち、どちらかを嫁に来させろ」だ。アンリが発情期前に番う行為の教育を受けることになったのも、この事情が関係しているのだろう。  ルネット家は二人ともオメガで、どちらかは婿としてアファをとることになるだろう。しかし、それも難しそうだった。  貴族のオメガが花盛る時は短い。婿入りするアルファを待つ間に、その時が過ぎてしまう可能性は高い。そのため、父はいい話があれば跡取りのことなど構わず、嫁がせるつもりのようだった。  よって、ルネット家に来た婚約話は、ミレーヌもアンリも父から聞かされることになった。といっても、男体のオメガと女体のオメガでは、後者の方が圧倒的に引く手数多だ。ルネット家には男のオメガと女のオメガがいると返した途端、二人のどちらかと言っていた相手が、すぐさま主張を変えて女の方でと言い出すことなど、よくあることだった。

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