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第87話

「貴方のことは、秘密裏に処理されると思いますよ。お嬢様の嫁ぎ先は旧家の貴族で、醜聞などあってはならないところでしょうから」  その言葉が意味するところは、幽閉か、あるいは――。  彼女は淡々と述べた後、出ていった。  彼女が運んできたスープは、数滴、皿からこぼれていた。皿以外に食器はなく、飲む気にもなれなかった。啜るように飲む自分は、今置かれている状況より、とても惨めに思えたからだ。  そして、誰が毒を入れたのか分からない以上、飲めるはずもなかった。  アンリは疑われている分、誰かを疑ってもいた。疑われたくない、信じてほしいと思っているのに、自分自身は誰かを疑う。そんな相反する心情を、ひどく滑稽に思う。しかし、笑うこともできず、ただぼうっと宙を見つめるだけだった。  そのまま、今が何時かも分からない牢の中で、時間は経過する。ここに閉じ込められてから、何日経ったのかも分からない。牢の上にある小さな窓からは、微かな光が入ったり消えたりする。それは何度か繰り返されたが、途中から数えることを辞めてしまった。もう何も考えたくなかった。

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