90 / 138

第90話

「叔母様は、父と折り合いが悪いの。だから父に漏れることは絶対にない。理由を伝えたら、快く譲ってくださると言っていたわ。……もちろん、ほとぼりが冷めるまででいいの。もちろん、最低限、ひとりで暮らしていけるだけの設備はあるわ。贅沢はできないし、しばらくの間は苦労するだろうけど……森で暮らすための書物も、数冊置いてあるの。貴方は飲み込みの早いこだから、すぐにきちんと暮らしていけるようになるわ」  馬車が進むと、がたごとと大きな音を立てるようになった。石畳ではない、人の手で整備されることのなかった道に入ったのだろう。  どこまで行くのか。早足で駆けるのなら、半日で辿り着くかと思ったが、そうでもないようだった。 「……安静が必要だからと言って、お医者様以外は今、私の部屋に入れないの。それに、お医者様にも理由は伝えてあるわ。だから、一日や二日くらい、いなくてもバレやしないの」  出発してから今まで、どのくらいの距離を走っていたのか分からない。しかし、途中で馬を代えたとして、少なくともあと一日は揺られ続けなければならないようだった。

ともだちにシェアしよう!