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第100話
アンリがいないことにレオンが気づいたのは、リスが暴れたからだと言う。餌をもらっていないと、リスはがたがたと鳥籠を揺らしていた。アンリはリスに餌を与える途中で、どこかへ出かけていったことになる。近くにいるだろうと思い、レオンは先にリスへ餌をやろうとしたが、鳥籠を開けた隙に、リスは出ていってしまった。
しばらく子供のような鬼ごっこをしていたが、とうとうリスは木へと登ってしまった。周囲を見渡しても、アンリの姿は見えない。もっと遠くへ散歩にでも行っているのだろうか? 何故? しかも、わざわざリスに餌をやる途中で、だ。
嫌な予感がした。リスはレオンのことなど気にも留めず、木の上で悠々と寛いでいる。放っておいても、しばらくはリスもその場にいてくれるだろう。レオンは先にアンリを探し始めた。
アンリを見つけて帰ってきた時には、どこにもリスの姿は見えなくなっていたけれど。
「もともと、俺たちには懐いていなかたから、森に戻りたかったんだと思う」
「とはいえ、今はまだ寒いだろう」
明日にでも餌をまいてみるとレオンは言った。外に木と布で小さなリス小屋を作っても良いかもしれない、とも。
今まで、アンリはリスを逃がした後も、関与しようとは思わなかった。自然の生き物だから、構っても仕方がない。懐かなくて当然だ。
しかし、今初めて、リスに優しくしたいと思えた。たとえそれが、自分のエゴに過ぎなかったとしても。
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