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第101話

 応急処置として薬草を貼りながら、レオンはぽつぽつと話し始めた。  彼の父は、デイヴァン・フォス・アーベル。アーベル家の当主で、アンリの義姉であるミレーヌを娶った。彼女はデイヴァンにとても大切にされ、やがて子宝にも恵まれた。レオンハルトは、次男として生を受けた。生まれ年を聞くと、アンリよりも十二ほど離れていることが分かった。  何の憂いもない家族には、ひとつ問題があった。レオンは幼い頃から身体が弱かったのだ。季節の変わり目には風邪を引き、そうでなくても、夜風に当たっただけで咳をした。体力もなく、一日中兄と遊びまわった次の日は、決まって熱を出していた。  ルネット家から嫁ぐ姉についてきたお抱え医師が、レオンの主治医となった。彼が言うには、大人になり、体力がついてくれば、レオンは今ほど寝込むこともなくなるだろうとのことだった。  しかし、それは自分のことを思いやって吐いた嘘なのではないかと、幼い頃のレオンはずっと考えていたという。自分は不治の病で、決して治ることなどなく、大人になることもなく死んでしまうのではないかと思っていた。熱を出して弱気になった日の夜には、誰にも知られないように、よくこっそり泣いていたという。

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