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第107話

 アルファは、番であるオメガを守る役割を持つ。そう教わってからは、病弱な自分では駄目だと思った。あの少年のために、自分はもっと強くならなければならない。  病は気からとよく言うが、気の持ちようだけで全てが治るとは言い難い。それでも、少なくともレオンは治療に前向きになった。聞くかもしれないと言われている薬草があれば取り寄せてもらい、どれだけ苦くても煎じて飲んだ。体力をつけたいからと、体調の良い日は、できるだけ外に出て身体を動かすようにした。  恐るべきは、初恋の執念とでもいうべきか。彼は健康も夢も手に入れた。それはあの少年と、美しい景色をたくさん見たいという可愛らしい夢だった。さらにいうなら、美しい景色を見て輝く彼の瞳を、笑顔を、一瞬たりとも見逃すことなく絵に残したいという夢だった。  そのころには、アルファとオメガが、具体的に番になる方法も、どうやって子供が生まれるかも知っていた。精通を迎えて少しした後、父から教育を受けろと言われたのだ。 「講師として、オメガを迎え入れる。彼が発情期になったら、色々と学ばせてもらうといい」  父は、時期が来たからさも当然というように、レオンに何も聞かず全てを決めようとしていた。 「お断りします」  しかし、レオンは話をされた途端、はっきりと断った。 「何故だ? 何もその相手と番になれと言っているわけではないだろう」 「俺は、心に決めたオメガの身体しか見たくないので」  そこからは、人生初の、壮大な父子喧嘩が始まった。

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