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第109話
「俺は主席で卒業してみせましょう。その暁には、経験を広げるため……描きたい景色を描くために、修学記念の旅に出ることをお許しいただきたい」
それは、数年間は我慢する。しかしその一瞬は自由に、好き勝手にさせろという意味だった。
「やけにアンリにこだわるが……もう二十年近くも前の話だ。同じ場所にいるとは限らない。仮に見つけられたとしても、相手にされるとは限らん」
「もし森にいなくても、何としても見つけだしてみせましょう。相手にされないと言うのなら、されるまで会話を試みるだけです」
「……旅の間だけだ。その中で見つけられなければ、諦めろ」
それから、寄宿舎で彼は寝る間も惜しんで勉強を続けた。数多の貴族からの誘惑や縁談に乗ることもなく、主席の成績を修めた。そして、旅の間は食べる間も惜しんで歩き続け、ようやく奇跡を手繰り寄せたのだった。
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