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第112話

「誰からも……俺は、疑われてて……。もっと、姉さんみたいだったら、違ったのかもしれないけど……」  もしも自分が、朗らかで、憧れを詰め込んだ陽だまりみたいな少女だったら。 「それに……それ以上に……俺が、独りだったって、分かってしまったのが嫌だった……」  声を上げても、誰も自分の言葉なんて聞いてはくれない。それは、確かな形をした孤独だった。  誰かは些細なことだと思うのかもしれない。そんなこと、気にしなくても生きていけると。しかし、アンリにとっては、絶望するに十分だった。  目の前がずっと真っ暗である感覚を、彼は今でも思い出せる。出口のない洞窟に閉じ込められているようなものだった。今だって、出口の明かりがほんの少し見えただけで、本当にこの状況から出られるのかは分からない。 「……姉さんがあの牢から連れ出してくれた時、心底ほっとしたんだ。最初は、助けてくれたからだと思った。憧れの人が、物語の騎士みたいに、俺を連れ出してくれたから……。でも、違った。誰もいない場所に連れてこられて、ほっとしたんだ。……これで、俺はいつでも自分を終わりにできる……そう思った」  灯りのない真っ暗な森は怖かったけれど、アンリの人生など軽く吞み込んでくれる闇なのだと考えたら、その内慣れた。

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