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第115話

「踏み出す前に、あんたの姿と言葉が浮かんだ……。あんたは、俺を好きだと言った。もしかしたら、俺の近くにいて、探るための嘘かもしれないと思ったけど……それでも、俺はまだ、返事をしてないって気づいた」  どうしたら、この想いは伝わるのだろう。本当は、まっすぐに目を見て言った方が良いに決まっている。それでも、怖かった。また拒絶されたらどうしよう。ありえないと分かっているのに、心が言うことをきかない。  怖くて言葉も震え、泣きそうな那明けない声しか出ない。それでも、せめて笑って言おう。彼は、自分の笑顔をずっと望んでいたのだから。 「まだ、怖いけど……俺は、あんたを好きになれるかもしれない……好きになりたい……そう、伝えたかったんだ……っ」  アンリの顔は涙でぐちゃぐちゃだった。しかし、レオンはうっとりするように目を細める。彼の片手が頬を撫でた後、首筋に顔を埋められ、抱きしめられた。 「やっと、笑顔が見られた……」 「全然、笑えてないのに……あんたの理想とは、違ったでしょ」  なのに、どうしてそんなに嬉しそうなんだろう。 「違わない。肖像画の君は不機嫌そうで、生真面目な顔で……俺は、彼が笑ったらどんなに可愛いだろうと、毎日のように考えていたんだ。俺の考えは当たっていたな」  やはり自分の目に狂いはなかったのだと、彼の声は誇らしげだった。一方で、「紛れもなく初恋だった」とか、「本当に可愛い笑顔だった」とか、歯の浮くような言葉の羅列に、アンリはとてつもなく恥ずかしくなった。  それでも、彼の背中に腕を回す。もう独りではどこにも行かせないとでもいうように、きついほど抱きしめられているけれど、その力強さが心地よかった。

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