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第117話

「君は、人に頼ることに慣れた方がいい」  そう言って、隣にいるレオンは笑う。 「君は独りでも生きていけるかもしれないが、頼ってもらえると、俺は嬉しい」  あまりにも堂々とした態度で忘れがちになるが、彼はまだ若く、アンリよりも年下だ。しかし社会経験は、彼の方が確実に積んでいるだろう。頼ってほしいと言われつつ、甘えられてもいるようで、そのアンバランスな感覚が自分達には相応しいのだろうと、アンリはちょっとおかしくなる。  少し笑って顔を上げると、視線がぶつかった。荒れた道を走っているのか、馬車が揺れ、顔が近づく。このままもう少し身を乗り出せば、彼の唇に触れられる。触れてもいい。触れたい。  しかし、実際に触れたのは、別のふさふさとした何かだった。 「見つかって、連れてきたのか?」 「……いや、俺もいるのを今知った」  森から出て、わざわざ街にまで下りてきて、自分達の馬車に乗る。懐いていない野生のリスがそんな行動をとるはずがない。きっとどこか別のリスが馬車に紛れ込んでいたのだろうと思ったが、やっと見つかったとレオンが嬉しそうに話すので、アンリは何も言わなかった。  レオンの肩に登りはしたものの、そのリスも懐いているというわけではなさそうだった。彼が撫でようとしたところでさっと肩を降りると、馬車から投げ出されない程度にうろちょろと中を探索する。いつか飛び出していくのではないかとひやひやして、長い道中、二人はまったく落ち着くことができなかった。  これから、二人で向かう場所は決まっている。レオンの生家だ。そして、そこはアンリが育った場所の近くでもある。  もうすぐ、彼は修学の旅を終える。その後、どうやって生きていくのかを親に報告したいのだと言っていた。

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