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第126話

「あの子が帰って来たわね」  アンリには、本当に彼かどうかは分からなかった。彼はいつも、静かに品のある歩き方をしていたからだ。少なくとも、大きな足音は立てない。 「あの子もまだ子どもなのよ。機嫌が悪くなると、ああなるの」  やっぱり、番う了承は得られなかったのだろうか。そんな不安に駆られた時、扉が音を立てた開いた。 「聞いてくれ、アンリ! 話はつけてきたが、父様が――」  ノックもせずに扉を開けるとは、やっぱり姉の言う通り、彼は不機嫌なのかもしれない。 「なんで母様とアンリが一緒に茶を飲んでいるんだ?」 「あら、姉と弟がお茶会をしてはいけない道理がある?」 「いや、ちょうどよかった。母様にも言おうと思っていたところだ。父様と兄様にも話はしてきた。俺は俺のしたいことをする、と」 「そう、わかったわ」 「ちょっと待って」  レオンが不機嫌なのは、家族の同意が得られなかったからだと、アンリは考えていた。 「父様からは得られなかったが、家を継ぐ兄様が快く送り出してくれたのだから問題は無い。なので、父様のことは母様に頼む」 「わかったわ。あの人も不機嫌だろうから、いい感じに宥めておくわね」 「そんな、親子仲を悪化させてまで、俺は……」 「案ずるな。俺と父様はもとから仲が悪い」 「胸を張っていうことでもないんだけどね。あの人はしきたりを大切にする人で、この子は、新しい考えをどんどん取り入れたい子だから」 「仕方がない。現実はいつでも万事円満とはいかないだろう」  姉はアンリに幸せだと言って笑っていた。それでも、数多くの困難はあったのだろう。物語のように、嫁いで家族に囲まれて、それでめでたしではないのだから。 「まあ、孫でも見せれば態度も変わるでしょう。気にせず、いつでも遊びに来なさいね」  最後の一言は、アンリに向けられたものだった。

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