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第127話
「それじゃあ、私はお邪魔にならないよう、退散するわね」
姉が席を立つと、リスは急いで姉の肩の上に登ろうとする。
「困ったわね。飼い主はあっちでしょう?」
「飼ってるわけじゃないから、姉さんが世話してくれる? その方がリスも喜ぶだろうし」
「冬眠しそこねたリスのようだ。せめて冬の間だけでも、世話をしてやってくれ」
「わかったわ。息子と弟が連れてきた子だもの。しっかり面倒見るわよ。……ある意味、この子が初孫かもしれないわね」
姉の冗談を気にすることなく、リスは外套のポケットに入れられ、満足そうに寛いでいた。
「あの……姉さん」
言い忘れがあったことを思い出し、アンリは姉を呼び止める。
「前に言ってた、『ひとりでも好きだって言ってくれたら勝ち』って、あれ、ほんとだった」
笑いながら、帰る前に姉が一言添えていく。
「また来るわ。グレードアップしたケーキを渡しにね」
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