「俺は世間知らずだから、旅の途中であんたの足を引っ張るかもしれない」 「お互い様だ。俺だって、森のことは何もしらない」 　たしかに、旅の中では森を越えていくこともあるのだろう。しかし、その中でも、自分がお荷物になることはあれど、彼がまったく役に立たないとはアンリには考えられなかった。 「……君が森で暮らしていた、あの小屋。そこの物置となっていた部屋に、いくつか本があっただろう？　中でも、植物の本に、いくつか折り目がついていた。何度も読み返された跡があった」 　彼は愛おしそうにアンリの頬を撫でた。その手つきに、どこか褒められているようにさえ思う。 「薬草の知識は、お前が努力して身につけたものだろう？　過去の事件があったから、遠ざけたって不思議ではないのに……二度と間違わないという気概すら感じたものだ。そして、君のその知識は、旅で必ず助けになる」 「わかった、わかったから……」 　恥ずかしくなって、思わず彼の言葉を遮った。 「そこまで言うなら……じゃないね。あんたがいいって言うなら、俺も、あんたといきたい」