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第137話
冬はいつも、夜明けが遅い。
いつ眠ったのか、アンリは覚えていなかった。最後にした時の記憶は、霞がかかったようにぼんやりとしている。あの時は突き上げられながら何とも達して、最後は掠れた喘ぎ声を出すことしかできなかった。途中で気絶してしまったのかもしれない。身体が綺麗になっているのは、彼が拭ってくれたからだろうか。
目を覚ますと発情期の焼けつくような熱はなくなっていた。初めてにしては激しすぎたような気もするが、身体には痛みも不調もなく、不思議とすっきりとした感覚さえあった。番としての相性が良かったのか、それとも彼が気を遣ってくれたのか。首の後ろを触り、きちんと消えない噛み痕がついていることを確認しながら、ぼんやりと考えた。
彼と世界を巡る旅に、もういつでも出発できる。話を聞いた時は、スケールの大きさに実感は少なかったが、今ではもう、アンリの胸は高鳴っている。
鳥籠のような貴族の世界ではなく、独りきりの鬱蒼とした森の中でもなく、とてつもなく広い世界を、アンリは一生を誓った彼と見て回れるのだ。
ただひとつ問題があるとしたら、当のレオンはまだ寝ているということだろうか。それも、アンリをがっちりと抱きしめたままで。これでは、早く身支度がしたくてもできやしない。
「ねぇ、起きてよ」
呼びかけても、彼は健やかな寝息をたてるだけ。指先で頬をつついてみると、ようやく目覚める気配があった。眉間によった皺をつついているうちに、もっとイタズラをしてみたいと思う。
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