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第16話 大洗濯大会1

「そこ! 汚い足で踏まない! まずご自分の足を洗ってください! ほらっ、こうです、こう!」  洗濯室へと雪崩れ込んだ生徒たちが、湯を張った桶の中へ入れた洗濯物を裸足で踏みしめると、歓声が上がった。  ハルが腰に手を当てて号令をかけるまでもなく、上級生たちは楽しそうに石鹸水の中ではしゃいでいる。 「ほらそこ! 私語してる暇があったら足を動かす! サボってばかりいると、実家に言いつけますよっ!」 「ハル、こんなもんでどうでしょうか?」 「ああ、いいですね。お湯で濯いで、それから脱水してください。あっ、そこ! 上着は型崩れするから丁寧に! 手で! 手で洗ってください!」  普段、洗濯などあまりしたことのない上級生たちは、石鹸で泡立ったお湯に足をつけると、悪戯心が湧いてきたようだった。生き生きとした表情で、オメガであるハルの采配を受け入れているさまは、とてもアルファとは思えない。 「ハルの指示は的確でわかりやすいです」 「しかも洗濯だけで許してもらえるなんて」  上級生たちのゴマスリに過剰に反応するのも悔しいので、ハルは呆れ顔で溜め息をついた。 「仮にもアルファともあろうものが、オメガの采配なんかに従順に従ってて、いいんですか?」  ハルはオメガだ。アルファではない。ガーディナー家は代々優秀なアルファを排出してきた家系で、ハルは突然変異株の、たったひとりのオメガだった。  発情期が初めてきた時のことを、ハルは未だに覚えている。体内の熱に苦しみながら、両親が自分のことで言い争うのを聞いた。無事に初めての発情期を終えたハルは、父の書斎に呼び出されるなり、ラインボルン学院への入学を予定どおり進めること、より優秀なアルファを卒業までに連れてくることを約束させられた。

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