28 / 179

第28話 紳士淑女のお茶会2

 ウィリスがトーリスを伴い、アリサの元へと移動した。ハルの左隣りに腰を下ろしたララが、「お二人で行かれたら、アリサ様が混乱なさるのでは?」とハルに問いかける。 「妹には赤毛の双子がくると事前に知らせてあるから大丈夫だ。それより、ララ。このクッキーはどうだ? うちの料理人のお手製は、ちょっとしたものなんだぞ」 「ありがとうございます、ハルさま」 「飽きたら昆布茶を淹れてやろう。梅干しもあるぞ。このおれが手ずから相手してやるんだ、ありがたく思えよ」 「あの、何ですか? それは?」  ハルがふんぞり返ってララに言うと、梅干しと昆布茶を不思議そうに眺める。当然だった。これはガーディナー家の自家製で、門外不出のレシピなのだ。 「梅の実をハーブと一緒に塩漬けしたものと、塩漬けにした海藻を煎じたお茶だ。健康にいいんだぞ。アリサのお手製さ」  悪役顏で梅干しをつまんだ上級生を指差すと、彼らは顔を真っ赤にして悶絶していた。 「召し上がった方が、とても……個性的な表情をしてらっしゃいますが……」 「だろ? こいつはおれの家の秘伝でな。客を揶揄うために出すんだが、どんな無愛想な客人でも、口に入れた途端にあの顔になる。ははっ、きみたち、口直しに昆布茶を飲んでみるといい。特別におれが淹れてやるから、感謝するといいぞ」 「う、うう……っ、まずっ」  ハルが悪役後で「旨いだろ?」と迫ると、苦しんだ上級生たちは虚無に近い表情を浮かべ、頷いた。 「ふん。アリサに秋波を送るなら、まずこの歓迎に慣れないとな」  ハルが言うと、アリサにすっかり骨抜きになったらしき上級生たちは、新たなる試練という名の梅干しを求めて、蝶よ花よとアリサの周りへ群がった。  その中で、ひとり涼しい顔をしてアリサの隣りにウィリスが陣取っているのが見えた。ウィリスは酸っぱいものに耐性でもあるのか、紅茶のカップに梅干しを入れて、悠々と飲んでいる。

ともだちにシェアしよう!