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第30話 紳士淑女のお茶会4

「さ、さすがに、……なぁ?」 「あ、ああ……」  間の悪さに周囲が固まるのを見たハルは、ハートの2のカードを指先でつまむと、「おれが奴隷か」と言った。 「あ、あの……」 「ララが王様だろ? 引きが強いじゃないか。さすがはアルファの学校に通うベータだけあるな」 「ハルさま……」  躊躇っているララがしょげた声を出して、カードを配った上級生が恐るおそる提案した。 「すみません、ハル……。いくら悪ふざけとはいえ、平民のベータが貴族を顎で使うなど……」  アリサとその隣りにいるウィリスや、別のテーブルにいるトーリスも、何も言わずにことの成り行きを見守っている。 「もう一回、やり直しましょう……」  カード係がハルからカードを回収しようと手を伸ばした時、ハルはぷいと横を向いてその手を避けた。 「やだ」 「えっ?」 「王様ゲームだろ? おれは梅昆布茶なんかで懐柔されないぞ!」 「ハルさま……?」  みんなの見ている前で、ハルは明らかに不機嫌になった。ベータであるララを差別しようとする空気が醸成されていることに、反発心がむくむくと湧いてきた。本来自分は天の邪鬼なのだと、ララをかばう言い訳を自分の中に見つけると、ハルは自身を正当化した。 「おれとララは今、主従関係にあるわけだが、それが家名に傷をつけるだと? そんなことを本気で思っている奴がいるとしたら、そいつは本物の馬鹿だな! こんなものはただの遊びだ。こんなことぐらいで傷が付くほど、ガーディナー家の家格は安くないぞ!」 「お兄さま……」  アリサが呆気に取られた顔をしていた。  気にいらなかった。  何もかもが。

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