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第33話 権利2
「目星はついているのか?」
「はい」
「では、そのアルファが紹介される日が、近いと思っていいのだな?」
「もちろんです、お父さん。おれは期待を裏切りません」
「ふん……」
父はハルを見下し顎を上げると、ハルの影に隠れるようにしているララへ視線を投げた。
「子どもというのは得てして道を踏み外しがちなものだ。だが、ガーディナー家にはその余地はない。わかるな? ハル」
「はい、お父さん」
父はハルとララを値踏みするような視線で一瞥すると、氷のように動かなくなったハルに冷たい視線を投げ、薔薇園の温室をあとにした。
「……」
温室のドアが開いたまま、外の冷気が静かに流れ込みはじめる。まるで、去った父がいた痕跡のように、足元にそれが溜まりはじめるのを感じたハルは、ララが沈黙するのを見て、自嘲した。
「何だ? そんなにガーディナー家の内情が珍しいか?」
「いえ! 決してそんな……」
「別にいい。家は貴族だからな。相続問題は重大なんだ。庶民のようにはいかないのさ」
ハルは気を張る元気も出ず、皮肉げに笑った。よりによって、一番知られたくなかった相手にこのことを知られてしまうとは。
だが一方で、もうララに対して気を使わなくて済むと思うと、ハルはどこかスッキリした気持ちになっていた。
「悪いがこのことは、皆には……」
「言いません。忘れます」
「ふん、そんな風にものわかりが良すぎると、損をするぞ? せいぜい競う相手の弱みを握ったと、内心小躍りするぐらいじゃなきゃ、ラインボルン学院でベータが生き抜くのは難しいんじゃないか?」
(ああくそ! どうしてこう肝心な時に、ツンデレ属性が発動するんだ……!)
だが、心が弱っていて、ハルはどうしても前言撤回する気力がなかった。これでララのハルに対する好感度が下がったとしても、自業自得だと思った。
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