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第35話 権利4

 ララは、どんなに苦しいことがあっても、きっとラインボルン学院を辞めたりしないだろう。そこには、並々ならぬ決意が込められていると思う。ハルは、そのことをララの口から知りたい、と思った。 「ララ。きみはなぜ……」 「ぼくがこの学院に編入してきたのは、ぼくを育ててくれたベータの父に期待をかけられたからです。家は幸いなことに裕福で、父は、ぼくに最高の教育を受けさせて、ベータの中でも最良の生活を、と思ったみたいです」 「……そうか」 「今まで、父の期待が少しプレッシャーだったんですけど……、うまく言えないんですけど、へこんでばかりいられないなって。ハルさまのようなお優しい方がいらっしゃることがわかって、ここでやっていけるかもしれないと思えるようになりました」 「俺たちは、親の過剰な期待を背負っている点において……」 「はい。少しだけ似ているように思います」  ララの家は大きな商家で、ララをラインボルン学院に入れるために、多額の寄付金を納めたという噂だ。ハルのような貴族には及ばないだろうが、ベータが入学を許可されたのは、その寄付金のおかげだと言う者もいる。おそらくそれは正しいのだろう。ララもまた、そういう意味ではハルと同じく、実家の実力に頼った末の編入なのだ。親の期待を一身に背負うということが、どれほどの重荷になり得るのか、ハルは知っている。きっとララも、眠れぬ夜をたくさん過ごしたのだろう。  だが、それでも汚れのない花として咲いていられるララが、ハルは少し羨ましかった。

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