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第43話 夜の訪問者1

 ぽつり、と涙がこぼれた。 (……夢、か……?)  ハルは体調を崩して午後の授業を全部休んだことを思い出した。気がつけば、もう日はすでに傾いて、夜の匂いがしている。  ベッドから身体を起こしたハルは、ため息をついた。 (何だか懐かしい夢を見た気がするが……)  起きた瞬間に、何の夢を見ていたのか忘れてしまった。ただ、懐かしさを含んだ空気にしばしぼうっとしていると、扉がノックされた。 「はい?」  返事をしながら、オメガゆえに個室を与えられている特別待遇に感謝した。時計を見ると、もう二十二時半を回っていた。早めに食事を済ませて、部屋で臥せっていたから、消灯時間近くであることに、全く気づかなかった。 「どうぞ」  ドアの外にいるらしき誰かに入るよう促す。上着は脱いでいたが、スラックスがクシャクシャだった。この部屋を訪ねてくる客は多くはない。消灯前ともなれば、さらに限られた人物だけだ。 「入るぞ?」  ウィリスが小脇に何かを抱えて入ってきた。まだ制服を脱いでいないから、見回りを終えて最後にハルの部屋に寄ったものと思われた。 「眠ってたか?」 「少しうとうとして、さっき起きたところだ。……どうか?」  ガーディナー家でのお茶会から、一週間が経過していた。ウィリスはポケットから時計を取り出すと、時間を確認した。消灯時間を過ぎても起きていて叱られないのは、風紀委員の特権だ。ウィリスは抱えていた荷物をハルのベッドサイドに置き、言った。

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