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第44話 夜の訪問者2

「先日のお礼状だ。ハルの家に招待されて、みんな相当嬉しかったとみえる。俺のところへ持ってきて、渡してくれって言う奴が後をたたなくてな。取りまとめていたら遅くなった」 「わざわざかまわないのに。律儀なことだな」  あれから、ララに呼び捨てにされているハルを、しばらくみんな物珍しそうに囲んでいたが、そろそろ違和感にも慣れてきた頃合いだった。 「フランシス家がこれで、……ロイエンバーム家のお礼状はこれか。ん? これはアリサ宛てに手紙か? 剛の者もいるものだな」  お礼状の束から、必要なものを選り分けていると、ベッドサイドに座ったままのハルの仕草を見ていたウィリスが、不意にため息をついた。 「俺をお前への便利係か何かと勘違いしている奴が多くて困る。噛み付いたりしやしないから、直接渡せと繰り返すのが嫌になって、ついまとめ役をしてしまった。悪く思うな」 「別に怒ってやしないさ。むしろきみが便利係をやってくれるなら歓迎だ」 「俺を顎で使うな。高くつくぞ」 「幾らならいいんだ? ガーディナー家の財力を見くびると、あとで後悔するぞ?」  ウィリスとのこうした掛け合いにも慣れてきた。今まで距離を取りかまえていたのが嘘のように、ララに呼び捨てにする権利をやってからというもの、親しみの込もった冗談が増えた気がする。  そして、それを楽しいとハルは感じていた。  今も、ウィリスと目があって、睨んでいるうちに、どちらからともなく吹き出してしまった。

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