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第47話 夜の訪問者5
「話?」
ウィリスはベッドサイドのハルの隣りに腰掛け、ため息をついた。肩と肩が触れ合い、制服の布地が擦れて変な感じがする。アルファとこうして触れ合うことは初めてではなかったが、ハルはどこか緊張を孕んでいる自分を意識し、小さく身じろぎした。
「今日は体調が悪かったんだろ? 長居はしないから安心してくれ。ただ、お前がひとりで苦しんでいるんじゃないかと思って、心配なんだ。誰にも言えずに悩むこともあると思うと、今までずっと、それに気づいてやれなくて、すまなかった」
「何を急に言い出すかと思えば……」
発熱するのは、オメガの性と関係があることだった。発情抑制剤を常用していると、どうしても体温が上がりすぎる日が出てくる。でも、そんなのには慣れっこだったし、孤独に過ごすことをそれほどつらく感じたことはなかった。
「要するに、慣れだ、慣れ」
そういう事情をウィリスに話すうち、身体の内側から、何かがじわりと浸透してくる感じがした。
「そうか。ならいいんだが」
ウィリスはハルの話に、どこか痛みをこらえるような声で相槌を打った。
「お前の味方としては弱いかもしれないが、何かあれば力になるから。家格とか、世間体とか、そういうものも大事かもしれないが、俺はそれらとは別の場所でお前を助けたい。俺のエゴだから、必要なければ切り捨ててもらってかまわないが、頼りにしてくれ」
ウィリスは言うと、おもむろに手を差し出した。
「?」
ハルがその手を握ると、ぎゅっ、と握り返される。
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